2013年07月15日

Merry Clayton / "Oh No, Not My Baby" (1972)

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60年代には
レイ・チャールズのバックシンガー隊レイレッツの一員として活躍、
1969年にローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」への
ゲストヴォーカル参加で
一躍その名が知れ渡ることになったソウルシンガー、
メリー・クレイトン。

1970年には1stソロアルバム『Gimme Shelter』、
翌年には2ndソロ作『Merry Clayton』、
75年には3rd作『Keep Your Eye On The Sparrow』を、
いずれもルー・アドラーが主宰する
オード・レコードからリリースするかたわら、
多くのアーティストとのセッションヴォーカルを務めた
実力派シンガーだ。

そのオード・レコードでレーベルメイトだったのが
かのキャロル・キング。
レーベルオーナーであるルー・アドラーの
セールス的な思惑もあったのだろうが、
キングのソロ作『つづれおり』への参加や、
クレイトンの2ndソロ作『Merry Clayton』には、
キングが3曲を提供するなど、
70年代初頭のこの時期、
音楽的交流を含め、
二人は近しい存在だった。

一方、
この二人のシンガーを
同じレーベルメイトとして支えていたギタリストが、
デヴィッド・T・ウォーカーだ。
タイプの異なる二人のシンガーに、
ギターという言語で呼応する姿は、
後追い世代の僕にとって、
ポップス、ロック、ジャズ、ソウルといった領域が交差し
魅力的な音楽の萌芽が見られたという時代に宿った
音楽の魔法とミラクルを
肌身で感じ得た好例のように思えた。

そんな魔法を色濃く感じたのが、
メリー・クレイトンがカヴァーした
「Oh No, Not My Baby」という一曲だ。

希代のソングライターコンビだった
ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングのペンで
1964年、マキシン・ブラウンに提供し世に出たこの曲は、
その後、アレサ・フランクリンやロッド・スチュワート、
ダスティ・スプリングフィールド、リンダ・ロンシュタットなど、
多くのカヴァーをうんだ。

もちろん、
作者であるキャロル・キング本人による自演バージョンもあり、
1980年リリースの『Pearls』収録バージョンをはじめ、
2001年にリリースされた『Love Makes The World』では
セルフカヴァーとしてリアレンジし再録もされた。
特にこの『Love Makes The World』版は、
作者キング自身がピアノで弾き語りながら
元夫であり盟友チャールズ・ラーキーのベースのみを携え、
自身の歩みと照らし合わせるかのように、
思いを噛み締めつづり奏でる姿に
心がじわりと揺さぶられる名演だ。

多くのカヴァーバージョンの存在や、
作者自身もが繰り返し演じるということが、
はからずも楽曲の普遍的な素晴らしさを物語るし、
アーティストそれぞれが挑む
異なる解釈や趣きに出会う楽しみは、
至福の瞬間でもある。

だが、
そんな名演揃いのカヴァー曲の中でも
特別な素敵さを感じるのが、
1972年にリリースされた
メリー・クレイトンによるカヴァーだ。

例えばキャロル・キング作の「Natural Woman」を、
アレサ・フランクリンがうたった例のごとく、
白人作者のポピュラーソングに
力強さを伴ったソウルフィーリングの息吹を
あらたなに注ぐことでうまれる交差のミラクルを、
メリー・クレイトンという
売り出し中のシンガーで試したかったという思惑が
プロデューサーのルー・アドラーにはあったかもしれないと
勝手に深読みしたくなる思いもある。

でも、
ソロアルバムには収録されず、
シングル盤としてのみリリースされた
クレイトン版「Oh No, Not My Baby」には、
野太くハリのあるソウルフルなヴォーカルに、
コーラス参加した作者キャロル・キングの歌声が
背後に流れるストリングスの調べとともに
互いの視線を探り合うようなゴツゴツとした緊張感を
ゆるやかに溶かす美しいハーモニーで重なり合い、
他のバージョンでは味わえない、
繊細とおおらかな躍動が交差する
音楽力豊かなスペシャルな魔法が宿っていると
何度聴いてもそう感じてしまう。

ギターで参加したのは、
我らがデヴィッド・T・ウォーカー。
二人のシンガーに、
つかず離れずの呼吸でそっと寄り添い、
やわらかで力強い楽曲のフィーリングを
個性的なタッチで終始バックアップしていく。
満を持したかのように中盤、
言葉数少なく、
短い小節数ではあるものの、
思いのこもった生々しさに満ちた
渾身のソロプレイを、
ここぞとばかりに切り込んでくる姿に、
心はグッと鷲掴みにされる。

主役を見つめピアノを奏でうたうキャロル・キングと、
その調べに耳を傾け、
奔放ながらも丁寧な振る舞いで、
一体となってうたい奏でるメリー・クレイトン。
その二人のシンガーと、
ギターフレーズでにこやかに会話するデヴィッド・T。
このトライアングルの出会いを想像するだけで、
おもわず笑みがこぼれてしまう魔法が、
瞬時に目の前に姿をあらわにするのだ。

シングル盤としてのみ世に出たため、
これまでCD化の陽の目を見ずにいた
クレイトン版「Oh No, Not My Baby」は、
2013年7月、
ベスト盤に収録されるというかたちで
CD音源化された。
これほどうれしいニュースはない。

そして、もう一つ。

この楽曲の
レコーディング風景と思われるスタジオ映像が
キャロル・キングのオフィシャルYouTubeチャンネルに
ほんの一部だがひっそりとアップされている。

http://youtu.be/vhYGbWnpjh4

キャロル・キング自身が作者として
主役である歌い手メリー・クレイトンに
細やかなアドバイスを積み重ね仕上げていくという
音楽的育みの一コマを記録したこのクリップをみると、
"Oh No, Not My Baby
Oh No, Not My Sweet Baby"
と切なる願いに思いを馳せる歌世界と、
彼らがうんだ魔法の意味を
そしてミラクルの素敵さを
よりいっそう愛おしく
味わい深く感じることができるはずだ。

素敵な一曲です。


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Merry Clayton / Best Of Merry Clayton (2013)


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2013年07月08日

Jayson Lindh / Ramadan (1971)

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際立つベースラインが、ギター、ドラム、キーボードを牽引する躍動に、フルートの音色が歌声のように感情表現を重ねる「Loading Ramp」でつかみはOK。スウェーデン出身のフルート奏者のソロアルバムは、北欧民俗音楽的香り漂わす主役リンダのフルートが、揺らぎのアクセントとなって硬軟入り交じりのスピリチュアルテイストと調和するジャズファンク。ボボ・ステントンが淡々と描く「Daphnia」での余韻音少ないエレピの音色は、疾走するフルートの足下を転がりながら沸点を抑制するクールな土台である一方、高揚を加速させる増幅装置としても機能。程よい緊張感を描きながらバンドアンサンブルを力みなくつなぐ潤滑油的貢献を果たしている。


posted by ウエヤマ at 00:19| Comment(0) | エレピ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする