2014年06月11日

Duke Ellington / Second Sacred Concert (1968)

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抜群のスウィングにソウルフィーリングが溶け合った、ビッグ・バンドとゴスペル隊による豪華絢爛大所帯の響宴。楽曲ごとにシンガーやソロイストを適所でフィーチャーしながら、神聖な佇まいに軽やかな鍵盤で優雅に指揮をとるエリントン。「Something About Believing」や「It's Freedom」でなぜか起用されたエレピの音色も、厚みあるバンドアンサンブルにそっと存在感を残す活躍ぶり。圧巻はスウェーデンの歌姫アリス・バブスと二人だけで演じる「T.G.T.T.」。バブスの澄みきった歌声と優雅に響くエリントンのエレピが描く神秘的な対話は、息を飲む荘厳さと柔らかな心持ちを体中で受け止めたくなる美しさだ。


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2014年03月26日

Bobby Jones / The Arrival Of Bobby Jones (1972)

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リチャード・デイヴィスのランニングベースが強烈な高速ジャズナンバー「Thanks To Trane」で幕を開けるサックス奏者ボビー・ジョーンズのコブルストーン盤は、生ピアノにウッドベース、ブラシドラムをバックに従え、コントラストの強いサックスの調べが舞うニューヨークジャズ。ムードある緊張が支配する佇まいに、突如として円やかに立ち現れるのが「Stone Bossa」や「Keepin' Up With Jones」で聴けるボブ・ドロウのエレピ。ソフトで淡い鍵盤タッチの電気音が、スイングするビートに巧妙に溶け込み柔らかな音空間を演出。生楽器による精悍な土台の上に、思わず頬がゆるむ遊び心やユーモアのかけらを、あしあとを残すかのように奏でるドロウのプレイは、場の空気を一変させるエレピの包容力とともに、端々からにじみ出る小粋な人間力をも強く印象づける。


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2014年03月01日

Larry Carlton & David T. Walker Special Live 2014

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言わずと知れた二人のギタリスト。

なんとステージで初めての共演。

ラリー人脈のバンドメンバーも強力な布陣で、
見事なバンドアンサンブルを聴かせてくれました。

とってもとっても
素敵なライヴでした。

セットリストとライヴレポートを以下にアップしました!
http://homepage2.nifty.com/ueb/davidt/larryanddavidt2014.html


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2014年01月05日

George Harrison / Dark Horse (1974)

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自身がスタートするレーベル名にもなったタイトルを冠し、L.A.エクスプレスら腕利きをも起用した意欲作。同年リリースされたロン・ウッドの『I've Got My Own Album To Do』にも収録されたロニーとの共作曲「Far East Man」は、ジョージとロニーがそれぞれ互いのバージョンにも参加し、いずれもウィリー・ウィークスとアンディ・ニューマークのリズム隊をバックに演じた交友の記録。メロウで切なくブルースフィーリングの効いたロニー版に対し、軽妙でリズムコンシャスながらもポップな印象を残す本作収録版は、清々しさに満ちたトム・スコットのサックスと、揺れのない乾いたトーンで淡々と奏でられるビリー・プレストンのエレピが、ロニー版でつづられるスライドギターと対比的に、軽やかな彩りを添える。コンセプトや指向がどんなに異なっても、往復書簡のごとくエールを交わしあった二人をつなぐこの1曲がある限り、趣きはいつだってエヴァーグリーンだ。

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ちょいと遅くなりましたが、
あけましておめでとうございます。

新年最初ということでこの一枚を。

「Far East Man」は、
最初にロニー版を聴いて瞬時に大好きになった、
今でもとっても大切な一曲で。
軍配はジョージ版よりロニー版で。

でも、
久しぶりに聴いたジョージ版は、
意外なほどリズム隊が際立っていたり、
サックスの音色が彩りあることに気がついたり、
以前と違った味わいで、
ずっと挙がっていたまんまだった軍配が、
自然と降ろされることになったりして。

よく聴いて「わかっていた」気になっていた楽曲が、
ふと違って聴こえてきたりする感覚が
不思議と多くなってきたような気がします。

Dark Horse生誕40周年の今年。
そしてそして、
数多くの名演が残された恐るべき1974年から40年という
アニヴァーサリーな今年。
きっといろんな「40周年」があちこちで語られるんだろうなあ。

そんなわけで、
こんばんは、音盤話。
今年もいろんな音楽に出会えますように。

どうぞよろしくお願いします。

ウエヤマシュウジ





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2013年12月29日

David T. Works Vol.58

「David T. Walker Japan Website」を更新。
「David T. Works Vol.58」をアップしました!
http://homepage2.nifty.com/ueb/davidt/works58.html


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2013年10月25日

南佳孝 / 忘れられた夏 (1976)

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気だるさの中にあるスタイリッシュな風貌。歌声には、トロピカルなテイストやブルースフィーリングを構え過ぎない姿勢でスッと体に馴染ませる演奏陣の洒脱も手伝って、やわらかくセンシティヴな感性があふれる。そこにあるのは、ダンディズムの一言で片付けたくはない、研いだ眼差しで見つめる音楽風景。エンディングで遠慮がちに奏でる「これで準備OK」のキレのある音色をはじめ、多彩なシンセサウンドの横でひっそりと佇む「ジャングル・ジム・ランド」でのバッキング、少し恥ずかしそうな表情でラテンの香りを抑制する「月夜の晩には」でのアプローチなど、主役の佇まいを損ねない佐藤博のエレピが、サウンドの熱量を表情豊かに上げ下げする。クールダウンする「静かな昼下がり」で聴ける、マイルドな表情をまといながらも芯の通った一音一音に、瞬間、身を委ねてしまうことを許されたい。


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2013年10月21日

Ed Motta with special guest David T. Walker @ Blue Note Tokyo

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素晴らしいライヴでした。

サプライズとミラクルとリスペクトに満ちたステージ。

エヂのバンドメンバーも、みんな的確で卓越したパフォーマンス。
なによりエヂの多才ぶりときたら。
そしてそして、デヴィッド・Tの際立つ存在感ときたら。

セットリストとライヴリポートを以下にアップしました!
http://homepage2.nifty.com/ueb/davidt/edmotta2013.html


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2013年10月14日

David T. Week!

いよいよ次週、David T. Walkerがゲスト参加する、ブラジルのシンガーEd Motta(エヂ・モッタ)の来日公演が開催!

 日程:2013年10月17日(木), 18日(金), 19日(土) の3日間
 場所:ブルーノート東京
 http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/ed-motta/


そして、公演直前の10月15日(火)、InterFMのFM番組「ソウル・サーチン・レイディオ」(20時-22時 DJ:吉岡正晴さん)に、David T. Walker生出演!
http://www.interfm.co.jp/ssr/index.php?mode=tue&id=11


そしてそして、今年2013年がちょうどリリース40周年にあたる名作『Press On』についてデヴィッド・Tご本人に振り返ってもらった最新インタビューはこちらから!
http://homepage2.nifty.com/ueb/davidt/ttt04.html


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2013年09月30日

益田幹夫 / Corazon (1979)

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キャロル・キングの表題曲カヴァーで幕をあけるニューヨーク録音作。デヴィッド・マシューズのアレンジワークも功を奏し、エレガントに包むストリングス隊と、弾力感溢れるアンソニー・ジャクソンのベースにハリのあるバーナード・パーディのドラムによる強固なリズムが、タッチの強弱でしなやかにうたう主役の鍵盤を流麗に装飾しながらガッチリと下支え。安易な楽園ムードとは一線を画す、シカゴの「Another Rainy Day In The New York City」や渡辺貞夫「Samba Em Praia」といったカヴァーでのトロピカルテイストや、自作曲「Let's Get Together」で仄かなスリルをまとったグルーヴを演出するエレピサウンドは、東海岸の強者達と堂々と渡り合う鍵盤奏者としてのさりげない主張を、慎ましやかながらもクッキリとした輪郭で描いている。


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2013年09月23日

グレーの居心地

Michael Gately / Gately's Cafe (1972)

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イタリア在住の日本人に
原稿執筆の仕事を依頼したことがある。
かれこれもう10数年前のこと。
イタリアならではの季節の行事を
現地からのレポートのような形で紹介してもらうという
定期連載の依頼だった。

メールであれこれやりとりする中で、
イタリアには「バール」とか「バル」と呼ばれる
カフェとバーの中間のような店が数多くあることを教わった。
最近でこそ日本でも
そんな意匠を掲げる店が出始めてきたけれど、
当時はまだ少数派。
昼はカフェ、夜は酒飲み処となる店はあるにはあったが、
軒数が比較にならないほどイタリアにはあるらしく、
文化や習慣の違いを感じたものだった。

カフェとバー。
というと思い出すのが、
マイケル・ゲイトリーが72年にリリースしたソロアルバム
『Gately's Cafe』だ。

ゲートフォールド仕様のダブルジャケットを開くと、
アルバムタイトルを模したと思われる店内風景が描かれている。
数々のボトルに、バーカウンター。
ひげ面に、くわえ煙草。
無愛想に酒を注ぎ、自らも一杯ひっかけながら、
明日の天気と次のBGMを考えるバーテンダー風の男。
そんな物語の一コマを演じる男こそアルバムの主役、
マイケル・ゲイトリーだ。

そう、ここはGately's Cafe。
バーではなくカフェなのだ。
見た目はバーだが、昼はカフェなのだろうかなどと、
タイトルとアートワークのアンバランスな感触を抱きつつ、
肝心の音はというと、
これまた不思議な味わいがある。

以前からソングライターコンビでもあった
盟友ロバート・ジョンと書き分けた楽曲たちを、
旧知の仲でもあるアル・クーパーがプロデュース。
巨漢の風体とは裏腹に、
優しく柔らかなゲイトリーの歌声を重ね録り、
アコースティックなテイストと
弦楽器のアンサンブルをしとやかに織り交ぜるアレンジで
フォーキーで暖かみのあるスウィートな演出を施しつつも、
どこか刺々しく、
陰鬱でビターな味わいが香る音空間は、
ゲイトリーの繊細な肌触りを十二分に引き出す仕事ぶり。
トラックダウンはニューヨークだが
録音場所はロンドンという点も、
暖色と寒色が押し退きしあっている要因だと
深読みしたくなる。

その英国からは、
当時アル・クーパーが懇意にしていた
エルトン・ジョンのバックバンド兼ミュージシャン集団
フックフットの面々が参加。
贅肉を削ぎ落としたシンプルなリズムが、
聴き手のイマジネーションを刺激しながら
じわりと足跡を残していく。

その流れからか、
アル・クーパー作「The Piano Player's Gone」では、
フリーのギタリスト、ポール・コゾフが客演。
朴訥としたゲイトリーの歌声を
熱を持ったテイストで包み込むコゾフのギターは、
エッジの効いたブルージーさで、
楽曲の濃淡を瞬時に描きだす。

かと思えば、
同年、ウィスパーズがカヴァーしたメロウな一曲
「You're What's Been Missin' From My Life」で聴ける、
物悲しさと切なさを表情に出さない苦笑いのような佇まいや、
どっしりと鎮座するリズム隊を引き連れて高揚する
「Color All The World」のどこか安堵する趣きなど、
やわらかな心持ちによるメロウネスの雫をも
聴き手の器に静かにしたためていく。

緊迫と緩和が反復し合う、
気がつくと聴き入ってしまう不思議な説得力を残す楽曲は、
ハートウォームなゲイトリーの風合いに交じって、
裏方から表舞台への階段を歩もうとする主役が抱えた、
高揚や野心や不安や葛藤といったナイーヴな感情が、
ポップな姿を纏おうとしながらも
意図せずはみ出し行き来しているかのようにも映る。
あるときはカフェであり、あるときはバーにもなる
程よい緩急のメリハリでゆるやかに紡がれる物語は、
スウィートでありビター。
白でも黒でもないグレーな佇まいは、
東海岸のミュージシャンを揃え輪郭を研ぎ洗練を加味した
ソロ2作目となる次作『Gately: Still 'Round』でも
変わることなく引き継がれる。
どちらともいえず、
答えを急ぎ過ぎないことを良しとする居心地のよさが
ここにはあるのだ。
 
アルバム中ジャケのバーカウンター。
その壁面に飾られた小さな看板にふと目がとまる。

 I AM NOT A FAST BARTENDER.
 I AM NOT A SLOW BARTENDER.
 I AM A HALF FAST BARTENDER.

ゲイトリー自身、
白黒つけるのはお好みではないようだ。


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2013年09月02日

Herb Geller / An American In Hamburg - The View From Here (1975)

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サックス奏者ハーブ・ゲラーの70年代中期らしいジャズファンク色濃いドイツ録音盤は、マーク・マーフィーらをリードヴォーカルに起用しビターな艶やかさを加味しながら、それら楽曲のヴォーカルなしインスト版をも揃えた二枚組。全編ファンキーで軽妙なリズムが粒ぞろいのなか、キレを携えどっしりと鎮座するドラムとベースのグルーヴが印象的な「Sudden Senility」は、中盤、テンポをスローに変化させるコンセプチャルな風貌ながらも、主役ゲラーの奥行きあるサックスが縦横無尽に宙を舞う、これぞジャズファンクの名に相応しいキラーチューン。オランダの強者ローズピアノ奏者ロブ・フランケンのエレピも、隙き間を縫いながらそこかしこに彩りを添え駆け巡る。インスト版を省いたほぼ同内容の『Rhyme And Reason』も米国アトランティックから同年リリース。


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2013年08月20日

Sharon Forrester / Sharon (1974)

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待望の初CD化。アルバムジャケットのキュートな佇まいも印象的な、ジャマイカ出身の歌姫が紡ぐ1stアルバムは、ジェイムズ・テイラー「Don't Let Me Be Lonely Tonight」や、ヴァレリー・シンプソンの「Silly, Wasn't I ?」など、バラエティに富んだカヴァーが光る一枚。耳に残るレゲエ調のテイストも、それがことさら強調されるのではなく、ポップな魔法をかけられたスウィートな居心地としてスッと体に馴染んでくる。元ゴンザレスでトリニダード・トバゴ出身のリチャード・ベイリーや、彼の実兄でオシビサの鍵盤奏者ロバート・ベイリーのほか、ジャマイカ出身のフィル・チェン(B)、ジェフリー・チャン(Key)など、英国で活動するカリブ色ゆたかな手練たちの緩急あるバックアップが功を奏した要因かも。ロバートやジェフリーらが奏でるエレピの音色も、みずみずしい彼女の歌声を優しく包みこむ。自作曲「Clothe My Lonely Body」でみせるソウルフィーリングは、ただ可憐なだけでない彼女のポテンシャル。仄かに香る感情表現に、心トキメク高揚がしっかりと息づいている。


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2013年08月16日

Marlena Shaw / From The Depths Of My Soul (1973)

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映画のワンシーンを描くかのように全編を紡ぐウェイド・マーカス指揮による荘厳なオーケストレーションと、コーネル・デュプリー(G)、ヒュー・マクラッケン(G)、ウィルバー・バスコム(B)、グラディ・テイト(Dr)ら東海岸の敏腕による弾力感たっぷりな剛健バッキングの重厚さを、軽妙に緩和しながら彩りを添えるデレク・スミスのエレピ。それらをしなやかに包みこむ豊潤なマリーナの歌声は実にまぶしい。ロニー・ダイソンの「Just Don't Want To Be Lonely」や、ランディ・エデルマン作の2曲「The Laughter And The Tears」と「Waterfall」など、ため息こぼれるカヴァーの解釈にも拍手。2年後世に出る名作『Who Is This Bitch, Anyway?』とは異なる肌合いなれど、ジャズとソウルとポップスの垣根を越える蜜月の萌芽は十分。その序章がここにある。


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2013年08月07日

Cannonball Adderley / The Happy People (1972)

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アイアート・モレイラやキング・エリソンらによるラテンの血肉がゴツゴツとしたリズムの高揚をやわらかく加速。かと思えば、混迷と渾沌を行き交うジャズの水脈がフリーキーな肌触りとともに漆黒の姿をのぞかせる。デヴィッド・アクセルロッドのアレンジ指揮による長尺ナンバー「Savor」は、寡黙に支えるチャック・レイニーのベースや、ワウペダルを駆使し弾力感溢れる生々しいフレーズを連射するデヴィッド・T・ウォーカーのギターとともに、決して表舞台に陣取るわけではなく、主役アダレイのサックスに追いつき追い越しの静かな存在感で絡みつくジョージ・デュークのエレピが、バンドアンサンブルの階層を熱を帯びながら交差。アルバム表題曲のエンディング間際にひっそりと描かれるデュークの跳ねた鍵盤さばきを目の当たりにすると、クールな洪水に沸々とした熱量が宿るトリップ感覚は、決して先の見えない闇ではなく、彩りを待つ躍動の共鳴だと思いたくなる。

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また一人、偉大な鍵盤奏者が天国に召されました。

R.I.P. George Duke



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2013年07月15日

Merry Clayton / "Oh No, Not My Baby" (1972)

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60年代には
レイ・チャールズのバックシンガー隊レイレッツの一員として活躍、
1969年にローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」への
ゲストヴォーカル参加で
一躍その名が知れ渡ることになったソウルシンガー、
メリー・クレイトン。

1970年には1stソロアルバム『Gimme Shelter』、
翌年には2ndソロ作『Merry Clayton』、
75年には3rd作『Keep Your Eye On The Sparrow』を、
いずれもルー・アドラーが主宰する
オード・レコードからリリースするかたわら、
多くのアーティストとのセッションヴォーカルを務めた
実力派シンガーだ。

そのオード・レコードでレーベルメイトだったのが
かのキャロル・キング。
レーベルオーナーであるルー・アドラーの
セールス的な思惑もあったのだろうが、
キングのソロ作『つづれおり』への参加や、
クレイトンの2ndソロ作『Merry Clayton』には、
キングが3曲を提供するなど、
70年代初頭のこの時期、
音楽的交流を含め、
二人は近しい存在だった。

一方、
この二人のシンガーを
同じレーベルメイトとして支えていたギタリストが、
デヴィッド・T・ウォーカーだ。
タイプの異なる二人のシンガーに、
ギターという言語で呼応する姿は、
後追い世代の僕にとって、
ポップス、ロック、ジャズ、ソウルといった領域が交差し
魅力的な音楽の萌芽が見られたという時代に宿った
音楽の魔法とミラクルを
肌身で感じ得た好例のように思えた。

そんな魔法を色濃く感じたのが、
メリー・クレイトンがカヴァーした
「Oh No, Not My Baby」という一曲だ。

希代のソングライターコンビだった
ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングのペンで
1964年、マキシン・ブラウンに提供し世に出たこの曲は、
その後、アレサ・フランクリンやロッド・スチュワート、
ダスティ・スプリングフィールド、リンダ・ロンシュタットなど、
多くのカヴァーをうんだ。

もちろん、
作者であるキャロル・キング本人による自演バージョンもあり、
1980年リリースの『Pearls』収録バージョンをはじめ、
2001年にリリースされた『Love Makes The World』では
セルフカヴァーとしてリアレンジし再録もされた。
特にこの『Love Makes The World』版は、
作者キング自身がピアノで弾き語りながら
元夫であり盟友チャールズ・ラーキーのベースのみを携え、
自身の歩みと照らし合わせるかのように、
思いを噛み締めつづり奏でる姿に
心がじわりと揺さぶられる名演だ。

多くのカヴァーバージョンの存在や、
作者自身もが繰り返し演じるということが、
はからずも楽曲の普遍的な素晴らしさを物語るし、
アーティストそれぞれが挑む
異なる解釈や趣きに出会う楽しみは、
至福の瞬間でもある。

だが、
そんな名演揃いのカヴァー曲の中でも
特別な素敵さを感じるのが、
1972年にリリースされた
メリー・クレイトンによるカヴァーだ。

例えばキャロル・キング作の「Natural Woman」を、
アレサ・フランクリンがうたった例のごとく、
白人作者のポピュラーソングに
力強さを伴ったソウルフィーリングの息吹を
あらたなに注ぐことでうまれる交差のミラクルを、
メリー・クレイトンという
売り出し中のシンガーで試したかったという思惑が
プロデューサーのルー・アドラーにはあったかもしれないと
勝手に深読みしたくなる思いもある。

でも、
ソロアルバムには収録されず、
シングル盤としてのみリリースされた
クレイトン版「Oh No, Not My Baby」には、
野太くハリのあるソウルフルなヴォーカルに、
コーラス参加した作者キャロル・キングの歌声が
背後に流れるストリングスの調べとともに
互いの視線を探り合うようなゴツゴツとした緊張感を
ゆるやかに溶かす美しいハーモニーで重なり合い、
他のバージョンでは味わえない、
繊細とおおらかな躍動が交差する
音楽力豊かなスペシャルな魔法が宿っていると
何度聴いてもそう感じてしまう。

ギターで参加したのは、
我らがデヴィッド・T・ウォーカー。
二人のシンガーに、
つかず離れずの呼吸でそっと寄り添い、
やわらかで力強い楽曲のフィーリングを
個性的なタッチで終始バックアップしていく。
満を持したかのように中盤、
言葉数少なく、
短い小節数ではあるものの、
思いのこもった生々しさに満ちた
渾身のソロプレイを、
ここぞとばかりに切り込んでくる姿に、
心はグッと鷲掴みにされる。

主役を見つめピアノを奏でうたうキャロル・キングと、
その調べに耳を傾け、
奔放ながらも丁寧な振る舞いで、
一体となってうたい奏でるメリー・クレイトン。
その二人のシンガーと、
ギターフレーズでにこやかに会話するデヴィッド・T。
このトライアングルの出会いを想像するだけで、
おもわず笑みがこぼれてしまう魔法が、
瞬時に目の前に姿をあらわにするのだ。

シングル盤としてのみ世に出たため、
これまでCD化の陽の目を見ずにいた
クレイトン版「Oh No, Not My Baby」は、
2013年7月、
ベスト盤に収録されるというかたちで
CD音源化された。
これほどうれしいニュースはない。

そして、もう一つ。

この楽曲の
レコーディング風景と思われるスタジオ映像が
キャロル・キングのオフィシャルYouTubeチャンネルに
ほんの一部だがひっそりとアップされている。

http://youtu.be/vhYGbWnpjh4

キャロル・キング自身が作者として
主役である歌い手メリー・クレイトンに
細やかなアドバイスを積み重ね仕上げていくという
音楽的育みの一コマを記録したこのクリップをみると、
"Oh No, Not My Baby
Oh No, Not My Sweet Baby"
と切なる願いに思いを馳せる歌世界と、
彼らがうんだ魔法の意味を
そしてミラクルの素敵さを
よりいっそう愛おしく
味わい深く感じることができるはずだ。

素敵な一曲です。


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Merry Clayton / Best Of Merry Clayton (2013)


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2013年07月08日

Jayson Lindh / Ramadan (1971)

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際立つベースラインが、ギター、ドラム、キーボードを牽引する躍動に、フルートの音色が歌声のように感情表現を重ねる「Loading Ramp」でつかみはOK。スウェーデン出身のフルート奏者のソロアルバムは、北欧民俗音楽的香り漂わす主役リンダのフルートが、揺らぎのアクセントとなって硬軟入り交じりのスピリチュアルテイストと調和するジャズファンク。ボボ・ステントンが淡々と描く「Daphnia」での余韻音少ないエレピの音色は、疾走するフルートの足下を転がりながら沸点を抑制するクールな土台である一方、高揚を加速させる増幅装置としても機能。程よい緊張感を描きながらバンドアンサンブルを力みなくつなぐ潤滑油的貢献を果たしている。


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2013年05月12日

Catalyst / Catalyst (1972)

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のちにMFSBを結成することになるフィラデルフィアのミュージシャンを中心に結成された4人組。ベース奏者アルフォンソ・ジョンソンの初期キャリアであり、中心となり牽引するエディ・グリーンの鍵盤が叙情的であり内省的でもある、シグマスタジオ録音の1stアルバムだ。同郷のノーマン・ハリスとロン・ベイカーがギターとベースで客演したミドルテンポのグルーヴが光る「Ain't It The Truth」を皮切りに、硬質で混沌とした風貌の「East」や、アンソニー・ジャクソンがベースで客演しやわらかくリズムがシンコペイトする「New-Found Truths」など、スピリチュアル的気配とポップなテイストが程よく交差するジャズファンクがズラリ。異なる色合いのバンドアンサンブルをエディ・グリーンのローズピアノが硬軟自在の絵筆で調和させていく姿が実に痛快。


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2013年05月06日

Ohio Players / Honey (1975)

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グルーヴィでどっしりとしたファンクネスと、スロー&ミディアムでつづる美しいバラードの卓越した調和。マーキュリー時代のオハイオは、とろけるような躍動の輪郭を抜群の緩急でくっきりと残す、きらめくばかりのスウィートな才覚を発揮する。官能的で甘美なアルバムジャケットのイメージもサウンドの色気を端的に表現する一方、単にカロリー度数が高いだけの押せ押せサウンドとは一線を画す、抑制を効かせた知的な濃厚さをチラリと覗かせるところが実はキモ。ビリー・ベックのエレピが、バンドサウンドを程よく中和しやわらかく際立たせているのも見逃せないところだ。印象的なギターリフからゆるやかに高揚が上昇する「Sweet Sticky Thing」は、揺れるグルーヴに一心同体で身を委ねたくなる極上のメロウネス。静かに脈打つこの鼓動とドキドキ感覚こそ真骨頂。


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2013年04月29日

Steve Kuhn / Steve Kuhn (1971)

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流麗なストリングス隊を従えるゲイリー・マクファーランド指揮のもと、ロン・カーター、ビリー・コブハブ、アイアート・モレイラによるリズム隊と、主役キューンによるピアノとエレピが描く交錯は、フリーキーでスピリチュアルな風貌ながらも知的でリリカルな佇まいの混濁。ECM移籍前のブッダレーベルに残された71年作は、冒頭を飾る「Pearlie's Swine」で静かな躍動を携えはじまりを告げる。キューン自身が朴訥な歌声を聴かせる「Time To Go」や「The Meaning Of Love」では、一心不乱に刻まれる重心低いリズムと、メロウで物憂げなエレピの響きとが互いを拒むように境界線を行きつ戻りつしながら次第に溶解していく不安定な調和がバンドアンサンブルに降臨。アルバムラストを飾る「Ulla」では、強固なリズムと深遠なストリングスとが醸す喧噪に、決着をつけるかのように強く響くピアノの調べに牽引され、静かな余韻を残し幕は閉じていく。


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2013年04月18日

Phil Upchurch / Darkness, Darkness (1972)

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ブルーサム移籍後初となるソロ作は、シンプルなシングルバージョンを凌駕した9分を超えるヤング・ブラッズの表題曲カヴァーという異色の幕開けが暗示する、平均約6分の楽曲を二枚組に収めた重量級。共同制作者トミー・リピューマとともに召集したチャック・レイニー、ジョー・サンプルら凄腕が霞むほど、エッジ鋭いブルースフィーリングの饒舌と艶やかなメロウネスが際立つギターワークが全編を支配。中でもマーヴィン・ゲイ「Inner City Blues」で見せる悶絶必至の鬼気迫るグルーヴたるや。キャロル・キングらポップフィールドからの選曲や、ニック・デカロ指揮によるアレンジワーク、「What We Call The Blues」他でひっそりとエレピを奏でる旧知の仲ダニー・ハザウェイの参加など、多岐に渡る音楽エッセンスと人脈地図を、あらゆる感情をフレーズと化すギタリストの凄みが横串しにした激傑作。アルバムをまとうダークな陰影とは対照的に、随所に宿ったほとばしる技量はどこまでもまぶしい。


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